2015年9月11日金曜日

Q:トイレットペーパーはいつできたの? トイレの歴史

 

6ヶ月程前になりますが、ある大衆紙におもしろい記事がでていました。

 
 

トイレットペーパーの掛け方


トイレットペーパーの掛け方についてです。表向きにかけてロールの上から紙を引っ張るか、裏向きにかけてロールの下から紙を引っ張るか。

 

 表向きの掛け方の長所は、好きな長さだけ選んで切れる事。端っこが見つけ易い。そして壁につかないので衛生的。

 

裏向きの掛け方の長所は、垂れ下がった部分が隠れるので整然と見える。ペットや小さい子供が巻き取ってしまうのを防げる。等。

 

この掛け方で性格判断もできるらしく、表向きに掛ける人は責任感が強く、きちんとしている。裏向きに掛ける人はのんびりしており、依存心が強く、芸術的。

 

それがあたっているかはさておき、トイレットペーパーの掛け方は、実は社会学者や心理学者が研究する程奥が深いのです。

 

さて、今回は建築からはそれますが,そのトイレットペーパーの歴史に迫ってみたいと思います。



スポンジから藁へ

 

以前、ローマ時代には棒の先についたスポンジでおしりをふいていたと書きましたが、ローマ軍が去ってしまうと、イギリスはバスルーム暗黒時代を迎え、おしりふきも藁が使われるようになります。

 

とはいっても皇族貴族達はもう少し洗練された方法を使っていました。15世紀の召使いマニュアルによると、主人のガードローブは常に清潔に保たれていなくてはならず、トイレットペーパーを充分常備しておくこと、と書かれています。

 

ここでいう「トイレットペーパー」は紙ではなく、毛布や綿か麻でできた布でした。未だにその名残で、マナーハウス等ではトイレットペーパーを扇形に折って並べて出すところもある様です。

 

 

白鳥でふく?


イギリス文学の父と言われるチョーサー(Geoffrey Chaucer 1343-1400)は、用を足した後きれいにする方法に関する学術論文の中で、白鳥の首が一番いいと述べているそうです。白鳥は、12世紀には皇室の所有物になっているのですが、チョーサーが国王の許可をとって試したのかどうかは定かではありません。

 

また、皇室の人間は白鳥でおしりをふいていた、というジョークもよくききますが、残念ながらその事実は確認されていません。白鳥は結構攻撃的なので、生きた白鳥でふくのはかなり難しかったのではないかと想像します。


©モリスの城
             

本が雑巾代わりに


16世紀にはヘンリー八世の下、修道院が解散されます。その図書館も閉鎖され、その中身の大部分は貴族が買い取りましたが、廃棄処分となった本はトイレで使われたり、ろうそく立てを掃除したり、ブーツを磨くのにつかわれたと、当時司教であり歴史家であったJohn Bale (1495-1563)は述べています。なんとももったいない話です。

 

新聞はおしりふき

 

1722年には、Northampton Mercuryがライバル新聞を侮辱して「bum-fodder」と表現しました。「Bum」は「お尻」で「fodder」は「飼い葉」の事なのですが、要するに「ケツのエサ」という意味で、おしりふきの事を意味します。

 

ちなみに、英語で退屈な書類の事を「bumf」と言いますが、これは「bum-fodder」から来ているそうです。

 

イギリスで最初の新聞が発行されたのは16世紀初頭です。ただし、ほとんどの人が文盲だったので、当初はTown Crierとよばれる役人が触れ回るニュースを頼りにしていました。

 

最初の日刊紙は1702に発行されたDairy Courant。ですから、このライバル同士のやりとりがあった頃までには、すでに新聞がおしりふきに使われていたのかもしれません。 

 

1747年には、Chesterfield卿が息子への手紙の中で、きちんとしたジェントルマンは時間を無駄にしないために、「本を何頁か切り取ってそれを用を足す所に持ち込み、読んでからクロアキーナ(ギリシャ神話における浄化しいては下水の女神)に捧げなさい」と勧めています。

 

実際、紙は貴重なものだったので、新しい紙でおしりを拭くのはもったいないと、ビクトリア朝でも新聞や広告、いらない紙を切って端を糸でまとめて使っていました。



アメリカでトイレットペーパーが作られる

 

中国ではトイレットペーパーはかなり長い歴史があるのですが、西洋で最初に生産したのはアメリカ人でした。1857年にJ. C. Gayetty’s Medicated Paper for the Water Closetが発売されます。

 

「プリントに使われるインクは毒のようなもので、使い続けることにより、痔を悪化させる」とし、痔に効用があるとうたい、アロエ入りで水溶性の紙を薬用として売り出しました。ただし、この件に関しては医学界からかなりのバッシングがあったようです。

          

アメリカのトイレットペーパーの広告 c.1878 (public domain)

ミシン目入りのトイレットペーパー

1871年に、Seth Wheelerがミシン目入りのトイレットロールの特許をとります。でもそれを商業的に最初に成功させたのは、アメリカのScott Brothersでした。



S Wheelerによる特許申請書 1891年(public domain)

このトレンドはイギリスにも広まり、1880年に設立されたBritish Patent Perforated Paper Companyを始め、何社も業界参入しました。

 

この時期最も成功したのは、W.W. Colley & Co.のテレピンという名のミシン目入りのトイレットペーパーです。これは1889年のパリ万国博覧会でメダルを受賞し、新しく建てられたエッフェル塔を含む、この博覧会会場のトイレに使われました。



イギリス人は硬い紙が好き?

 

この頃のトイレットペーパーには、テレピン(松脂油)やユーカリ油が使われていました。20世紀初頭までには、日本のブランド「ミカド」のちりめん紙もイギリス市場でがんばりましたが、イギリス人は硬い紙の方を好んだ様です。

 

トイレットペーパーの広告。ホルダーも購入可。時期不明 Wellcome Collection (public domain)

綿毛のように柔らかいトイレットペーパー


さて、1932年にSt Andrew Millsが設立されました。1942年には、イギリスで初めて2枚重ねのトイレットペーパーを発売しました。イギリスでは有名な「綿毛のように柔らかい」Andrexトイレットペーパーの誕生です。1972年にはテレビコマーシャルに子犬を起用し、ブランドネームを確固としたものにしました。

 

 

カラフルなトイレットペーパー


1957年までは白に限られていましたが、60年代、70年代のカラフルなバスルームスイートに合わせる為でしょうか、色々な色や模様のトイレットペーパーが発売されるようになり、現在に至っています。