先日、古建築を専門にしている建築家が来た時に、玄関を入ってすぐの廊下の床を見て「素晴らしい床だね!」というので、ずっと気になっていた事を聞いてみました。「これって何でできているの?」答えはpammentと呼ばれる素焼きの床タイルでした。「4センチぐらいの厚さがあって、土の上にそのままひかれてるはずだよ。」ということで、pammentについて調べてみました。
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東イングランドのタイル
「pamment」というのは東イングランド、特にNorfolk州やSuffolk州でよく使われている、黄色がかった素焼きのタイルの事を言います。16世紀から床材として使われる様になりました。大きさは12インチ(30.5cm)四方か9インチ(22.9cm)四方で、厚さは1.5インチ(3.8)〜2インチ(5cm) 。
Norfolk Pammentsという会社では、今でも昔ながらの方法で床タイルを手作りしています。素材を混ぜ、型にいれて形をつくります。そしてそのまま自然乾燥させること、夏で4週間、冬場は8週間。そして竃にいれて22時間焼きます。このビデオではその工程を見る事が出来ます。
ただし、現在制作されているタイルは2.5cmの厚さですが、昔に使われていたタイルはもっと厚かったので、当時は制作にもっと時間がかかったことが想像できます。
木の床は腐る
昔は1階部分に木の床材を使う事はありませんでした。それは土の上にそのまま敷くと腐り易いからです。
19世紀になると吊床 ができますが、それでも木材の入手が限られていたようです。
様々な床材
裕福な家では石を敷きましたが、イギリスは柔らかい石灰石が多いため、床材に適した石を採石できる場所は限られていました。ですから大多数の普通の家では一階部分の床はbeaten earthと言われる土を固めただけのものでした。
先述した様に、東イングランドでは、16世紀から素焼きのタイルが使われる様になります 。これは一般の家だけでなく、教会やマナーハウスでも使われていました。
18世紀になると、舗装煉瓦が全国的に使われる様になります 。
息ができる床
タイルは土の上にそのまま敷かれました。時には土の上に砂を乗せることで平らになるように調整しました。そうすることで、床下の湿気は家を通じて、家の中の湿気は床を通じても蒸発するようにできていたのです。
失われていく昔ながらの床材
これが20世紀になり、タイルの上にビニール製の床材や、ゴムが裏についたカーペットが使われる様になると、床下に湿気がこもり、かびの原因になりました。それを、タイルが直接土の上に敷いてあるのが原因だと思われて取り除かれてしまった為、現在では昔ながらのタイルの床はかなり少なくなってしまいました 。この家でも一時期カーペットで覆われていたようなので、こうして残っているのは幸運です。
ケア方法
Pammentタイルのケアですが、もともとは低温殺菌していないサワーミルクを布に少量つけ、それでこすっていたようです。そのことでタイルを保護し、つやを出していたようです。でもこれを実践するにも、匂いが気になります。もっとモダンな方法としては、蜜蝋やテルビン油を勧めています 。一番大事なのは床の呼吸を止めない事。その為に使うものも気をつけなければいけないようです。
おお、久々の更新ですね。今回は床ですな。。なんともいい色。素足で歩いてみたいですね。
返信削除「床の呼吸を止めない」とは、興味深いです。
Shimonan様、コメントありがとうございます。古い家について調べているといかに昔の家が「呼吸」をしており、それを止める事で問題が出てくるかがよくわかってきます。新しい家はいかに断熱性を上げるかということで作られているので、全く逆の考えですね。
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