前回舗装の歴史を見てきましたが、今回は19世紀に入ってからのお話をしたいと思います。
19世紀に入り、ビクトリア朝になると、道路の状態の悪さと、排泄物や肉屋や魚屋から出た内臓などの廃棄物などの衛生問題に危機感を感じ、ついに道路整備に真剣に取り組むようになりました。
埃のひどいマカダム式
J L McAdamは、ターンパイク・トラストに関わっている間に、新しい舗装の仕方を発明しました。マカダム式舗装と言われるものは、石を砕いたものを砂利と混ぜ、ローラーで圧し固める方法です。
この方法は1815年から、交通量の少ない道路に使われるようになりました。安価で表面がスムーズ、そして石の敷石よりも馬車の音が響かないので、すぐに広まりました。
雨水が浸透するため、水たまりができないことも利点でしたが、排泄物も浸透し、埃がひどかったことから、その埃が病気を引き起こすと考えられ、雨の降らない日には1日に1〜2回水が撒かれました。
蒸気ローラーを使えば効果的なこの方法、残念なことにコストの問題で普通のローラーを使っていた為に欠けやすく、外れた小石や破片が馬のひずめに入ってしまうこともありました。
ウェストミンスター・ブリッジは毎年14cm程の厚さの砂利を新しく加える必要があったそうです。ですからメンテナンスにはお金がかかりました。
うるさい敷石
その後に出てきたのが、花崗岩でできたsettと言われる10cm四方程の四角い敷石です。最初に使われたのは1824年です。コスト、耐久性、そしてザラザラな表面の為滑りにくいという面で、settは優れていました。
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板石
同じ時期、1824年に、James Traillがスコットランドのケイスネス(Caithness)で、商業用に板石(flagstone)の切り出しを始めます。それはイギリス全国に送られ、歩道用の敷石として使われるようになります。しかし1920年代になると、コンクリートや合成石の台頭によりほとんどの石切り場は閉鎖されてしまいました。
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溶岩石
道に木材?
1840年代になると木材が使われるようになります。スウェーデンから輸入された安いパインの無垢材のブロックが道に敷かれます。安価でしたが、柔らかい木材はあっという間にすり減り、腐ってしまいました。
滑りやすいアスファルト
再び木材
1922年に出版されたロンドンの路面地図によると、広範囲にわたって木材が使われていたことがわかります。しかし木材は、金属製の車輪の下ではすり減り、でこぼこになり、また、雨水や排泄物を吸った木材は特に夏にはすごい匂いを発し、衛生的ではありませんでした。
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一貫性のない道
1909年にジョン・バーソロミューによって制作された路面の地図では、黄色が木材、青が石材、緑がアスファルトで示してあります。
ちなみに何故これだけ違う路面があるのかというと、ロンドンだけとっても、様々な教区や組織が管理していたからです。例えばサマセット・ハウスやサボイ・ホテルのあるトラファルガースクエアからテンプルを結ぶThe Strand(1.2km)だけでも9つの別々の組織が管理していました。
それぞれの組織がそれぞれの考えで動いていたので、1本の道を通っていても、途中から舗装が変わるということはよくありました。例えば、ケンジントンからシティに行こうとすれば、木材、マカダム、アスファルト、sett、cobble、そして砂利道とあらゆる路面を通ることもありえました。その為路面の変化に馬が驚いて、事故が起こることもしょっちゅうでした。
偶然から生まれたターマック
1901年に、土木技師のEdgar Purnell Hooleyがある日製鉄所の近くを通ると、なめらかな路面を見つけました。そこで聞いてみると、タールの樽が落ちて割れてしまい、道路を覆ってしまったそうです。そこでタールが広がらないように、機転を利かせた作業員が鉱滓(鉱石を精錬するときに出るカス)をその上に蒔いたそうです。
その表面は耐久性があり、埃が出ず、車輪の跡がつきません。Hooleyは早速それを商業化する研究をし、1902年には特許を取ります。その方法は「tar-macadam(タール・マカダム)」からターマックと名付けられ、各地で使われるようになりました。
馬車から車へ
道が燃料に
風情のある石畳は過去のものに?
さて、風情のある石畳の通りですが、石が緩んででこぼこになった道で人が転び、その賠償額に辟易した地方自治体が、石畳の道をアスファルトの道に敷き直しているそうです。
2010年のテレグラフ紙の記事によると、過去5年間に石畳の道を敷き直したのはイギリス国内66の市にのぼるそうです 。歴史のある街では石畳もその魅力のうち。それが失われてしまうのはなんとも悲しいものです。
パッチワーク
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