2016年1月3日日曜日

Q:カーテンはいつできたの? カーテンの歴史

さて、前々回よろい戸について書きましたが、ではカーテンはいつできたのでしょう?今回はそれを調べてみたいと思います。

 

 

部屋の仕切り


実は家の中で布を掛けることは、かなり昔からされていました。でも現在のカーテンとは異なり、部屋の仕切りとして使われておりました。

 

ローマ時代の家はいくつもの部屋に別れていましたが、玄関と貯蔵室の様に特にしっかりしたドアが必要な場所を除き、家の中にドアはありませんでした。そのかわりに部屋の入り口にはカーテンがかけてあり、それで部屋を仕切っていました。


Roman House by Harmann Bender (public domain)

防寒のため


アングロサクソン時代の一般家屋は質素なものでしたが、9世紀に描かれた絵から、また当時の文献から、裕福な家ではローマ時代の家と同様部屋の入り口にはドアの代わりにカーテンが使われていた事がわかります。

 

壁には防寒の為に布かタペストリーがかかっていました。大広間は食事にも使われましたが、夜には騎士達や召使い達が床で寝ましたので、その時の使用状況により、布で仕切りました。

 

 

ベッドの周り


家の主用にはベッドがありましたし、その頃は移動にベッドを持ち運びしていたので、裕福なゲストもベッドがありました。ですからプライベートを保つ為、そして防寒の為にもベッドの周りにも布がかけてありました。色は明るく派手で、防寒だけでなく家の中を明るくする為に使われていたことがわかります。

 

 

壁掛けに使えるのは富裕層だけ

 

リンカーンにある12世紀に建てられた裕福なユダヤ人のタウンハウスは建設当時一階に一部屋、二階に一部屋の二部屋しかなく、この空間をカーテンで仕切って使われていたと考えられています。

 

布は高価だったので壁掛けに使えるのはお屋敷やお城、裕福な家だけでした。最も高価な布、特に絹やそれよりも上等なタフタは教会に使われました。

 

 

窓にはないけどドアにはある

 

16世紀になると一般家庭でも壁に絵を描いた布が掛けられる様になります。室内にドアがつけられるようになっても、壁掛けとコーディネートして、カーテンがドアの上に掛けられました。この頃はまだ窓にカーテンをかけることは一般的ではありませんでした。以前にも書きましたが、この頃はまだ窓ガラスは普及しておらず、紙や皮を貼ったり、よろい戸を使用していました。

 

 

ベッドは最も高価な家具


15世紀後半ぐらいからベッドは家に備え付けられる様になりました。家の中で一番高価な物はベッドでした。ですからベッド周りのカーテンには高価なものが使われました。裕福な家では中東やイタリアから輸入されたタペストリーやシルクベルベット、ブロカテルでできたものを使っていました。日中使わない時には角につり下げられた袋の中に収められました。

 
1770年代のベッド

17世紀になると冬にはタペストリーやベルベット、夏には軽いシルクが使われる様になります。

 

 

カーテンの登場!


この頃にはジョージ朝建築の特徴でもある上げ下げ窓(sash window)が普及されだします。窓ガラスの普及と上げ下げ窓のデザインにより、窓が初めて注目されるようになります。そして現在私達が使用しているような窓のカーテンが生まれました。

 

最初のうちの窓のカーテンは、薄い布を一枚掛けただけのかなりシンプルなものでした。とはいってもまだまだ一般的ではなく、大きなお屋敷の中でも重要な部屋にのみ使われました。 

 

17世紀末になると、一対のカーテンが使われる様になります。記録上最も古い一対のカーテンは、南西ロンドンにあるハムハウス(Ham House)のもので、1654に付けられたものです。

 

1610年に建てられたハムハウスは、1626年にチャールズ一世の子供時代の遊び相手で廷臣であるWilliam Murryに贈与されました。最新のトレンドに敏感なWilliamとその娘Elizabethは、ハムハウスを自分たちの趣味にあわせて改築します。 

 

1670年代までには、ハムハウスの主要な部屋の窓には、すべて一対のカーテンが取り付けられました。


Ham_House by Angmering (creative commons)

窓カーテンの地位は低かった

 

それでも窓カーテンの地位はベッド周りのカーテンよりも低く、最も裕福なお屋敷でも窓カーテンには品質的に劣る薄地絹(sarsnet)が使われました。

 

一般家庭ではまだ窓にカーテンをつける余裕はありませんでしたが、つけたとしても梳毛でできた青か暗い色の布でした。

 




2 件のコメント:

  1. A happy new year!でございます。2016年初のUPはカーテンですか。布地の発展と大きく関わるアイテムですよね。今回読んでいて、はっとしたのは、経済力により選べる色も限られていたということです。「貝むらさき」という染料は貴重なもので、それで染めたものは高貴な人しか着られなかったと聞いたことがあります。青とか暗い色は安価だったんでしょうか。そちらにも興味がわいてきます。今年も楽しみにしております。

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  2. shimonanさん、コメントありがとうございます。化学染料のなかった時代は身につける色である程度経済状況がわかるようだったのでしょうね。染色の歴史についても是非調べてみたいですね!

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